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高いワインセラーと安いワインセラーはなにが違うの? 価格を決める「5つの要素」をプロが解説

 

高いセラーと安いセラーの違いを専門家に聞いた

 
ワインにハマってしばらくすると、さまざまな味わいのワインを試したくなったり、いいワインを買って自宅で熟成させたくなったりするもの。
となると必要になってくるのがワインセラーですが、まず気になるのが「高いセラーと安いセラーで、なにが違うの?」という点ではないでしょうか。
収納本数が少ないものが安くて、収納本数が多いものが高いのはわかりやすいですが、同じ収納本数でも価格が大きく異なるものがあるのが悩ましいところ。
いったい高いセラーと安いセラーでは何が違うのか? その疑問を解消すべく、株式会社イズミセでワインセラーの販売を担当するエキスパート・奥村将宏に話を聞きました。

 
 

高いセラーと安いセラーの違い1:冷却方式

 
奥村「難しい質問ですが、ひとつ言えるのは、ペルチェ式とコンプレッサー式という冷却方式の違いです。ペルチェ方式のワインセラーは安価なものが多く、それに比べるとコンプレッサー方式は値段が高めのもの多いです」

 
ペルチェ方式とは、ペルチェ素子という板状の半導体熱電素子に電気を通すことでセラー庫内を冷却し、同時に庫外に放熱する方式のこと。簡単な冷却方式なので夏場に大量のワインをきっちり冷やすという使い方には向かない一方、軽量かつ安価にしやすいという特徴があります。

 
奥村「たとえば、弊社で販売している『PELTIER12』はロングセラー商品で、シャンパンボトルや背の高いアルザスボトルも収納可能で人気があります。すぐに飲む予定のワインを保管しておきたい、とりあえずセラーを一台買ってみたいという方にはとてもおすすめです」

 
PELTIER12

 
一方のコンプレッサー方式は冷媒と呼ばれるガスが循環することでセラー庫内を冷やす方式で、要は冷蔵庫で使われるのと同じ冷却方式。そのため冷却能力が高く、大型化も可能です。ワインセラーの価格を決めるもっとも大きい要因はズバリ「収納本数」ですが、そもそも収納本数の多いもの=コンプレッサー方式なのです。

 
 

高いセラーと安いセラーの違い2:2温度設定は可能か

 
奥村「その上で、設定できる温度帯がひとつなのか、ふたつなのかによっても価格は変わります。同じ大きさのセラーであれば、ふたつの温度が設定できるセラーのほうが価格は高くなります」

 
たとえば赤ワインは15度、白ワインは12度で保管したいといった場合、ひとつのセラーのなかで2温度が設定できると便利。たとえばすべてを15度で管理しようと思えば、白やスパークリングワインは飲む前にセラーから出して、冷蔵庫なり氷を入れたワインクーラーなりで冷やしたほうがおいしく飲めますが、2温度設定が可能であればそのような手間を減らすことも可能となるのです。そのような便利機能が実装されている場合、やはり価格は高額になりがちです。

 
奥村「2温度管理ができるセラーですと、コンプレッサー方式の『R&W27+』が人気です。上下ともに5~20℃の設定が可能で、直径80㎜のシャンパンボトルも収納できるので便利なんです」

 
R&W27+

 
 

高いセラーと安いセラーの違い3:ヒーターの有無

 
奥村「温度帯とは別に、ヒーターの有無も価格が上がる要因になります。ヒーターは、冬場などに周辺の温度が下がりすぎてしまったときに温度変化を避けようと思うと必要になる機能。とくに寒冷な地域で長期熟成を考えているのであればお勧めしたい機能になります。弊社の商品でいえば『TwoTime55』『TwoTime40+』など。どちらも上下の棚ともに5~18℃の設定が可能です」

 
ワインの熟成に重要なのは「温度変化が一定」であるという点。たとえばペルチェ方式だと夏場には庫内を冷やしきれない可能性があり、ヒーターがないと冬場に庫内の温度が下がりすぎる可能性があります。
コンプレッサー方式かつヒーター機能が搭載されているセラーであれば、周辺環境を問わずに常にワインを一定の温度に保つことができ、そのような高機能なセラーはその分高額になるというわけです。

 
TwoTime55
TwoTime40+

 
 

高いセラーと安いセラーの違い4:生産国

 
また、製造国も価格の差分の要因となります。フランス製、日本製などはやはり高く、他の多くの家電同様、ワインセラーでも一般的な中国製は品質に対して安価になりやすいのです。

 
奥村「フォルスターの『ロングフレッシュ』シリーズは日本製。日仏商事株式会社の『ユーロカーブ』シリーズや、株式会社Z-MAX(ジーマックス)の『アルテビノ』シリーズはフランス製です。弊社も含めた多くのメーカーは、中国製を採用しています」

 
安心できる日本製や「ワインといえば」のフランス製がいいのか、あるいはリーズナブルな中国製がいいのかは消費者一人一人によって選択肢が異なるところでしょう。

 
 

高いセラーと安いセラーの違い5:素材

 
素材面に目を向けると、高級セラーには金属壁を採用しているものが一部あります。これはなぜなのでしょうか?

 
奥村「金属でエンボス加工をしたものは、凹凸がある分水分を留めて庫内を保湿してくれるんです。ワインの長期熟成においては庫内の湿度も重要ですからね。たとえば『GALLERY88』という商品は、結露が付きにくいLow-Eガラス扉に加えて木製展示棚仕様の弊社ルフィエールシリーズの最上級クラスです」

 
素材がいいと、結露を防ぎつつ湿度を保つことができるなど、より長期保存に向いたスペックになります。また、庫内の壁面のみならず、正面のガラス、扉のフレーム、棚の素材などによっても価格は変わってきます。これは機能に加えて見栄えにも影響する部分。レストランなどではワインセラーがインテリアの一部ともなるケースもあるので、とくに素材の高級感は重要です。

 
GALLERY88

 
 
 

自分に合ったワインセラーを選ぼう!

 
このように、基本的にはより温度変化を少なく、安定してワインを保管できるのが高級ワインセラーであることがわかったのではないでしょうか。
高級ワインセラーに対して、安いワインセラーはワインを「冷やす」ことに特化しており、ワインを一時的に保管するのであれば十分、という機能になっているケースが多いです。
じゃあ安いワインセラーでは長期保存ができないのかと言われれば、そんなこともありません。あくまで、より厳密に、数年あるいは10年以上の長期にわたり、偉大なワインをゆっくりと寝かせるのであれば高級セラーのほうがベター、それくらいに考えておくと良いのではないでしょうか。

 
ワインセラーが一台あると、ワインライフはぐぐっと豊かなものになります。安いセラーが悪い、高いセラーが良いというわけではありませんので、ご自分の予算に合わせて、必要な機能を持つものを選ぶのが良いでしょう。もちろん、専門家に相談するのも良い方法です。
最後にひとつだけアドバイス。高いにせよ、安いにせよ、ワインセラーは想定よりも一回り以上大きい(収納本数の多い)ものを選ぶことを強く勧めます。セラーがあってもワインは次から次へと増えていくものですから!