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夏の大敵!ワインセラーの「結露」どう防ぐ?発生のメカニズムと対策を専門家が解説

 

ワインセラーから水漏れ!?その正体は「結露」

 
夏のワインセラーからポタポタと水が……!「水漏れ?」「故障かも!?」と焦ったことはありませんか?実はこれ、ほとんどの場合“結露”と呼ばれる自然現象が原因です。とくに梅雨から夏にかけては、ワインセラーに結露が発生しやすい季節なんです。

 
では、結露はなぜ起こるのでしょうか?そして、どうすれば防げるのでしょうか?株式会社イズミセでワインセラーの販売を担当するエキスパート・奥村将宏に詳しく聞きました。

 
奥村「夏場になると、『ワインセラーが水漏れしているけど、大丈夫か?』という問い合わせを一定数いただきます。そういったお問い合わせをいただいた場合、まずお伝えするのは『ワインセラーはその構造上、部品として水を一切使用していません』ということ。ですので、本体内部から水が漏れ出すということは基本的に考えられないんです。ただ、結露水が床にこぼれおちてしまうことは考えられます」

 
 

結露発生のメカニズム

 
結露とは、空気中の水蒸気が冷やされて水滴になる現象のことです。ワインセラーは基本的には「冷蔵庫」なので、扉ガラスの表面温度も下がります。すると、ガラスの周りの空気が冷やされ、空気中に含まれる水蒸気が水滴になるのです。夏の空気はたっぷりと湿気を含んでいますから、なおさら結露が起きやすくなるのです。

 
ここまでは、「庫外」に発生した結露のケースです。一方で、セラーの庫内に結露が発生するケースもあります。これにはどのような原因が考えられるのでしょうか?

 
奥村「もっとも多いのは、扉がきちんと閉まっていないケースです。庫内に多量の結露が見られる場合、扉の隙間から外気が入り込んでいる可能性があります。外気が庫内に入り込み、温度差によって結露が発生してしまうわけです。たとえば、背の高いボトルが邪魔をしてセラーの扉が閉まり切っていないということもよくあります。また、長年の使用で扉のゴムパッキンが劣化して隙間ができていたり、ヒンジが緩んで扉全体が少し下がる『扉落ち』という現象も原因のひとつです」

 
というわけで、セラー庫内の結露に悩まされているという方は、まずは扉がしっかり閉まっているかをチェックしてください。セラーの販売元に相談すれば、パッキンの交換や、扉落ちの修理に対応してくれるケースもあると言います。

 
また、セラーの設置環境も大きく影響します。キッチンなどの水回りの近くは湿気が多いため結露が生じやすく、セラー周囲の放熱スペースが不足している場合も同様です。また、同じ環境でも庫内の設定温度を低くしている場合ほど、外気温との差が大きくなり結露のリスクは高まります。

 
 

ワインセラーの結露を防ぐには?

 
では、そんな悩ましい夏場の結露を防ぐために、家庭ではどのような対策ができるのでしょうか。

 
奥村「まず基本となるのは、扉の開閉時間をなるべく短くすること。そして扉の開閉回数をなるべく少なくすることです。また、扉を閉めた後はきちんと密閉されているか確認することも重要です。細かい点ですが、扉を勢いよく閉めると、その反動でわずかに開いてしまうこともあるので注意が必要です。扉はゆっくりと、そして確実に閉めましょう」

 
その上で、設置場所を湿度の低い場所へ移動させたり、夏場は設定温度を少し高めにしたり、セラー周囲の放熱スペースを十分に確保したりといった対策がとれるのであれば有効ですし、これからセラーを設置したいと考えている方は、上記のような条件を満たす場所を設置場所として選ぶとよいでしょう。

 
奥村「一点、できれば避けていただきたいのが畳の上にセラーを直接置くことです。畳に直置きしてしまうと、セラーの重みで畳が沈み、セラーの水平が保てなくなってしまいます。コンプレッサー式のワインセラーは内部に発生した結露を『水受け皿』と呼ばれるパーツで受け、コンプレッサーの熱で蒸発させるのですが、水平が保たれていないと水受け皿に溜まった水が流出し、結果的に水漏れのように床を濡らしてしまうことがあるんです。どうしても畳の上に置く場合は、必ず厚く硬い板などを敷いて水平を保つようにしてください」

 
また、結露を防ぐという意味では「Low-Eガラス」を採用したモデルを選ぶことも直接的な効果のある方法です。Low-Eガラスとは、特殊なフィルムで熱の伝わりを抑え、結露を軽減するガラスのことです。

 
奥村「私たちが販売している“ルフィエール”シリーズでも、多くの製品にLow-Eガラスを採用しています。ただ、廉価なシリーズのなかには採用していないものもあるので、セラー選びの段階から対策を考えるのであれば、Low-Eガラスを採用したものを選んでいただくと、のちのちの手間が省けると思います。また、ドアヒーター機能がついた製品も結露対策に有効ですよ」

 
 

結露が発生してしまったときの裏技

 
ただ、どれだけ対策を施しても結露は自然現象。そして、気候変動で夏の暑さが過酷さを増す一方の昨今、結露は防ぎきれません。もし結露が発生してしまった場合は、乾いたタオルでこまめに拭き取ることが大切……なのですが、最後にとっておきの裏技をご紹介しましょう。

 
奥村「食器用の中性洗剤を20倍に薄めた液体を布に含ませ、ガラス面に薄く塗り広げます。その後、乾いたタオルで拭き上げると、食器用洗剤に含まれる界面活性剤の効果で水滴がつきにくくなりますよ。効果は1週間ほどですが、どうしても結露してしまうという方はお試しください」

 
夏の結露は完全に防ぐのは難しいものの、結露の正しい知識と対策を身につければ十分対処可能です。結露に対する正しい知識を身につけて、大切なワインを最適な環境で保管してくださいね。