ワインセラーは届いてすぐ電源ONはNG? 冬場はコンセント抜いていい? 専門家に聞く使用上の注意
専門家に聞く、ワインセラー「使用上の注意」
ワインにハマると必ずと言っていいほど欲しくなるのがワインセラー。たくさんのワインを所有して気分に合わせて選んだり、いいワインを自宅で熟成させたりと、ワインの世界をググッと広げてくれるアイテムですよね。
そんなワインセラーですが、実は長く快適に使うための“使用上の注意”があります。どれも難しいことではありませんが、大切なワインを状態良く保存するためには大事なことばかり。株式会社イズミセでワインセラーの販売を担当するエキスパート・奥村将宏に詳しく教えてもらいました。
ワインセラー使用上の注意1:届いてすぐに通電させない
それが1台目であれ複数台目であれ、ワインセラーが自宅に届く日は楽しみなものですよね。しかしここで早速の注意点! 実は、自宅に配送されてきたばかりのワインセラーは、すぐにコンセントにつないでは(通電させては)いけないのです。
奥村「コンプレッサー方式のワインセラーの場合、庫内を冷やすために使用する冷媒と呼ばれる物質と潤滑油とが、配送中の振動などで混ざり合ったような状態になっています。冷媒と潤滑油が混ざり合った状態で通電させてしまうと、コンプレッサーの配管が詰まり、故障の原因となってしまうのです。届いたばかりのワインセラーはしばらく静置してから通電させてください」
コンセントにつなぐのは冷媒と潤滑油が完全に分離するのを待ってから。どれくらい待てばいいかは製品の説明書に書いてあるので、それを参照しましょう。
奥村「詳しくは説明書を見ていただきたいのですが、最低でも数時間。できれば半日は置いていただきたいですね。置いていただけばいただくほど安全に使用していただけますから」
ちなみに、これはワインセラーの冷却方式のうち「コンプレッサー方式」を採用した機種の場合の話。もうひとつの冷却方式である「ペルチェ方式」の機種であれば、届いてすぐに通電させても問題ありません。
コンプレッサー方式とペルチェ方式についてはこちらの記事をご参照ください↓
ワインセラーの「ペルチェ」と「コンプレッサー」どちらを選ぶべき? 専門家に聞いた
ワインセラー使用上の注意2:ワインを入れるのは庫内が冷えてから
さらにもうひとつ注意点。一定時間ワインセラーを静置し、いざ通電させてもすぐにワインは詰め込まないほうがベター。
奥村「ワインを入れるのは庫内温度が設定温度までしっかり下がってからにしていただきたいんです。というのも、空気が冷える温度よりもワイン、すなわち液体が冷える温度のほうが遅いから。ですので、先にワインを入れてしまうとワインの冷却がスムーズに行かないケースが出てきます。そのため、セラーが正常に動作するか(故障していないか)をチェックする意味で、まずはワインを入れずにセラー庫内を冷やしていただきたいです」
ワインセラー使用上の注意3:大事なワインはアルコール除菌
ワインセラーが届いて半日、さらにセラーの庫内温度が設定温度まで下がりきるのを待ったら、ついにワインを庫内に入れるわけですが、ここでも注意点。
奥村「ワインには、どうしても元々置かれていたカーヴ(生産者の保管庫)などに根付いているカビ菌が付着していることがあるんです。ですので、カビが心配な場合はボトルキャップであるとかラベル周辺をアルコール除菌シートなどでラベルを傷つけないように優しく拭いていただくといいと思います。とくに大切なワインであればラベルの部分に食品用ラップを巻いていただくと、ラベルの損傷を防げると思います」
冷蔵庫と異なり一定の湿度を保つワインセラー内は、カビ菌がより繁殖しやすい環境ともいえます。ワインセラー庫内にカビ菌が繁殖し、大切なワインラベルがカビだらけ……といった事態を防ぐためには、入れる前に除菌シートでサッとひと拭きという手間をかけるとベターというわけです。できれば庫内も(暑すぎない季節などは)定期的に清掃してあげるといいでしょう。
ワインセラー使用上の注意4:なるべく開閉を避ける
ここまでは「設置編」でしたが、ここからは「日常編」。ワインセラーを普段使いする上で、気をつけるべき点も教えてもらいましょう。
奥村「ひとつめは、なるべく開閉をしないということでしょうか。開閉が少ないほど、庫内温度が安定してワインにとって望ましい環境がキープできますから。とくに夏場は開閉が多いと庫内温度が上がりやすく、夏の空気は水分を多く含んでいるので結露の原因にもなりますから」
冷蔵庫でもよく言われることですが、扉の開閉は庫内温度に大きく影響を与えます。どれにしようかな? とセラーの扉を開けっぱなしで迷う時間は、(楽しい時間ではありますが)なるべく短くしたほうが良いでしょう。
ワインセラー使用上の注意5:冬場もコンセントは抜かないほうがベター
外気温と庫内温度の関係で、さらにもうひとつアドバイス。
奥村「秋から冬にかけて、外気温(室内温度)が下がってくると、冷やす必要がないからとコンセントを抜いちゃうという方も散見されるかと思いますが、これはできれば避けていただいたほうがベターです。というのも、ワインセラーの中には我々にとっての頭脳にあたる『基盤』というパーツがあるのですが、通電しておくことでこの基盤が乾燥した状態を保てるんです。コンセントを抜いてしまうと、基盤が湿気により故障する可能性がでてしまいます」
これはあくまでも湿度の高い環境にセラーを置いている場合、という注釈付き。とはいえ、温度の上がる夏になってセラーをコンセントにつないだら故障していた……となると目も当てられないので、心に留めておくと良さそうです。
ワインセラーに入れていないとワインはどうなる?
さて、このようにセラーの“使い方”を見てきたのは、大切なワインを安定した環境で保管し、おいしい状態で飲みたいからですよね。最後に、ワインセラーに入れていない、適切に保管していないワインがどうなってしまうのかを聞いてみました。
奥村「一般に、セラーに入れずにおいたワインは、紫外線や振動、熱や温度変化の影響を強く受けることになります。光に当たり続けたり、温度変化の激しい場所や、暑い場所に放置され続けたワインは当然劣化する可能性があります。『どう劣化するか』は一概に言えない部分ではありますが、少なくとも望ましい熟成はしないと思っていただいて良いかと思います」
いいワインほど、時とともに酸味や(赤であれば)渋みの角がとれ、香りは複雑さを増していくもの。熟成したワインを飲むのは大きな喜びですが、常温で放置した場合、ワインは望んだ熟成は遂げず、ただ劣化していってしまいます。「すぐに飲む用」のワインであればセラーに入れずとも良いかもしれませんが、良いワインを長く寝かせておくならば、やはりセラーの環境が最適なのは間違いありません。
ワインセラーはワインライフをより豊かにしてくれる頼れる相棒。だからこそ、“正しい使い方”を頭に入れておくことが、大切なワインを最高の状態で楽しむことにつながります。とくにセラーを初めて買おうと思っているという方は、ぜひ本記事を参考にしてくださいね!