ワインセラーが「故障かな?」と思ったら。対処法と修理について専門家に聞いてみた

大切なワインを保管するワインセラーですが、家電製品である以上いずれは故障してしまいます。
「ただ、故障かと思ったら実は故障ではなかったりするケースも多いんです」と、株式会社イズミセでワインセラーの販売を担当するエキスパート・奥村将宏は言います。
故障かそうでないかを見極めるには?そもそも故障をさせないためには?
ワインセラーの「故障」についての気になるところを、専門家に詳しく聞いてみました!
ワインセラーの「故障」について
ワインセラーが故障するケースにはどのようなものがありますか?
奥村「一番多いのは『温度が設定どおりに冷えなくなる』という不具合ですね。ただ、冷えない=故障というわけでもないんです。」
どういうことでしょうか?
奥村「たとえば設置状況です。セラーは、機種によっても異なりますが背面に放熱スペースが必要です。壁にぴったりとくっつけて設置してしまうと、本体から放出された熱を逃すことができず、庫内温度が上がってしまうことがあります。また、最近は酷暑の影響で真夏だと40度近くまで気温が上がることがありますが、室温が40度を超えるような場合は、庫内を十分に冷やしきれないことがあるんです。
さらに、故障ではなく『エラー』という可能性もあります。」
エラーとは?
奥村「セラー内部にある基盤が庫内温度の状態を誤って感知してしまい、『これ以上冷やさなくていい』っていうエラーを起こすことがあるんです。このような場合は一旦コンセントを抜いていただき、少し間を置いてから再度通電いただくとエラーが解消され、問題なく庫内が冷却されるということもあります。」
放熱スペースを再確認する、一度コンセントを抜いて再度通電するといったことを試すべきなんですね。
奥村「他にもいくつか冷えなくなる要因は考えられます。たとえば、セラーの上に物を置くのも放熱を妨げるためおすすめできません。そもそもセラーの天面はあまり丈夫に設計されていないため、凹みなどの変形が生じる可能性もありますしね。また、お客様のなかにはセラーをクローゼットなど収納スペース内に設置したいという方もいらっしゃるかと思いますが、セラー前面は開放状態であることが前提に設計されているため、これも放熱を妨げる要因となります。」
飲食店の中には、セラーを隠したいという場合もありそうですね。
奥村「その場合でも、例えばクローゼットをスリット入りのものにして空気が通るようにするなどしていただけたらありがたいですね。セラーは扉を開けることが前提なので、説明書などにも書いていないケースがほとんどですが、後ろや左右からきた熱が前面に逃げていこうとするときに、前が塞がっていると熱の行き場がなくなってしまいますので。」
ここまで冷却装置が「故障したかも?」というケースを教えてもらいましたが、それ以外の部分はいかがですか?
奥村「お客様からの問い合わせでよくあるのが『庫内は冷えているようだが、ディスプレイの表示が40度とか50度になっている』というケース。これは、摂氏と華氏の表示を切り替えることができるセラーで起きたことで、タッチパネルを知らないうちに長押ししてしまい、表示を切り替えてしまったのが原因と考えられます。もちろん、故障ではありません。」
セラーから異音がする、という意見も見たことがあります。
奥村「実はこの異音の発生にも前述した放熱スペースの問題が関わっているケースがあります。通常、ワインセラーは、庫内温度が高まるとコンプレッサーが稼働して庫内を冷やし、十分に冷えると稼働を止め、冷却で生じた霜を溶かすというサイクルを繰り返します。しかし、放熱スペースがないと庫内温度が上昇しやすく、霜を溶かし切る前に再度冷却を始めざるを得なくなります。すると庫内で霜がどんどん大きくなり、それがファンに当たって『ガガガガガ』といった異音の原因となってしまうんです。」
そんなことが起こるんですね!なにか対策はありますか。
奥村「一旦コンセントを抜いて通電を止めます。すると霜が溶けるので、中の水分をタオルなどで拭き取った上で、再度通電を開始してください。その際、可能であれば少しでも放熱スペースを広げていただくと、霜の発生が抑えられ異音が生じにくくなると思います。また、設置時にワインセラーの水平が取れていないことで、コンプレッサーの振動がセラーの脚の隙間に影響して異音が生じてしまうこともあります。ですので、異音がする場合は水平に設置できているかも確認するといいでしょう。
それと、故障ではないのですが『ワインにカビが生えた!』というお声もいただくことがあります。」
これも故障ではない?
奥村「はい。ワインセラーはワインの保存に適した温度と湿度を保つように設計されていますが、実はこれはカビ菌にとっても繁殖しやすい温度と湿度なのです。ですので、ワインセラーに入れる前のボトルにカビ菌が付着していると、それらがセラーの中で広がることは残念ながら大いにあり得てしまうのです。その為、大切なワインを収納する際は、ボトルを拭いたり、カビが繁殖しやすいラベル部分は食品用ラップでくるむなどの対策を取ると良いと思います。あとは結露ですね。これは庫内と外気の気温差によって生じるものなので、故障ではありません。」
異音しかりカビしかり、故障かな?と思ったものが故障ではないということは多くあるわけなんですね。
奥村「はい。ただ、もちろん本当に故障で冷えなくなっているということもあり得ます。まず起こりやすいのが『扉落ち』と呼ばれるもの。ワインセラーの前扉の吊元部分がヘタってしまうことで起き、扉とパッキンの間に隙間が生じてしまっている状態です。こうなると庫内に外気が入ってしまうため、庫内温度が冷えきらなくなってしまいます。ルフィエールのセラーの場合、こちらは修理が可能です。これを防ぐためにも、扉はなるべく静かに開け閉めしていただくと良いと思います。雑に閉めると、閉めた衝撃で扉が半ドア状態になってしまうこともありますから。」
他にも修理できる故障はありますか?
奥村「ディスプレイの故障は、パネルの基盤を交換することができれば修理可能です。基盤の交換が可能か否かは製品によって異なるので、ディスプレイが表示されないなどの症状が出た場合は、販売店に問い合わせていただくのが良いと思います。また、通電自体をしなくなったというケースもあります。コンセントを差してもディスプレイになにも表示されず、コンプレッサーも稼働していないという状況です。これは機械の中の変圧器の不具合による可能性があり、修理で対応できることもあります。」
では、修理できないというケースは?
奥村「コンプレッサー機種は庫内を冷やす冷媒サイクルが故障した場合、修理ができないんです。これはワインセラーの宿命で、ここまで述べてきたことをいろいろ試し、それでも庫内が冷えないという場合は、冷媒サイクルの故障の可能性が高いです。このケースは残念ながら買い替えていただくよりほかはありません。ワインセラーの製品サイクルはおよそ7年で、もちろんそれより長く使えることも多くありますが、だいたいそれくらいの期間を経過すると冷媒に不具合が生じやすくなってしまうんです。」
そうならないためにできることはありますか?
奥村「コンプレッサーの稼働頻度を少なくするのが一番良い方法です。設定温度を極端に低くしない、扉の開閉を少なくする、放熱スペースをしっかり取る、暑すぎる環境に置かないといったようなことですね。このようなことを守っていただくと庫内温度の変化が少なくなり、コンプレッサーの稼働も減るため、製品寿命は長くなることが期待できますし、中に保存している大切なワインのためにもなります。また、設置時や移動時の注意点も守っていただく事が重要です。」
それはどのようなものでしょうか?
奥村「まず設置時ですが、届いたばかりのセラーは配送中の揺れにより潤滑油と冷媒が混ざった状態になっています。この状態ですぐに通電してしまうと配管がつまり、冷却不良の原因となります。また、ワインセラーは基本的に横倒し厳禁なので、引っ越しや室内で移動する際に横倒ししてしまうと、それも故障の原因となります。また、落雷も基盤の故障の原因となるので、可能であればアース線を付けたりといった対策を取っていただきたいです。」
ほかにもできる対策があれば教えてください。
奥村「ワイン以外のものをなるべく入れないことですね。ワインセラーはあくまでワインを保管するための製品なので、それ以外のものを入れてしまうと、例えば吹き出し口を塞いでしまうなどといったトラブルの原因となりやすいです。特に多いのが、ワインの木箱や化粧箱などをそのままセラーに入れるケースです。紙とか木には湿気も寄ってきやすいので、外した状態で収納することをおすすめします。また、湿気の多い場所に設置すると結露が生じやすいので、水回りなどへの設置は避けていただきたいですね。大切なワインを守るためにも、なるべくセラーに負荷をかけない環境で使っていただけると、故障せずに長くお使いいただけるのではないでしょうか。」
故障かな?と思ったらまず確認!
庫内が冷えない
【チェックすべきポイント】
- 背面と左右の放熱スペースが十分にあるか?
- 前面を塞いでいないか? セラーの上に物を乗せていないか?
- 暑すぎる環境にセラーを置いていないか?
【できる対策】
- 放熱スペースを十分に確保
- 暑すぎる部屋に置かない
- 扉の開閉をなるべく少なく
- 一度コンセントを抜いてみる
表示がおかしい
【チェックすべきポイント】
- 華氏と摂氏が切り替わっていないか?
【できる対策】
- マニュアルに従って表示を確認
- ディスプレイが表示されない場合は基盤の交換が必要
異音がする
【チェックすべきポイント】
- 水平に設置されているか?
- 放熱スペースは十分にあるか?
【できる対策】
- 一度通電を止めて霜を溶かし、庫内を拭いて再度通電
- 放熱スペースを十分に取る
カビが生えた
【チェックすべきポイント】
- 水回りの近くなど湿気の多い場所に置いてないか?
【できる対策】
- ワインを収納する前にボトルを拭き、ラベル部分はラップで包む





