専門家に聞いた! ワインセラーを買おうと思ったら調べるべき「7つのチェックポイント」
ワインセラーを購入する前に調べるべきことは?
ワインにハマると、長期熟成用や一時保管用などの用途でワインセラーが欲しくなるもの。とはいえ、無計画に選んでしまうと、買ったはいいが設置できないとか、設置はできたがすぐに故障してしまう……といったリスクも。
そこで、株式会社イズミセでセラー販売を担当するワインセラーのエキスパート・奥村将宏に、「セラーを購入する前に調べるべきこと」を聞いた!
まずは「放熱スペース」が取れるかどうかを確認
セラーを購入する前に調べるべきこととはなんなのか。パッと思いつくのは設置場所のサイズだ。当然のことながら、セラーのサイズ分の空きスペースがなければセラーを設置することはできない。そして、その上で「放熱スペースが取れるかどうかも調べる必要があります」と奥村はいう。
奥村(以下同):「ワインセラーを設置する際には、製品によって異なりますがセラー背面と壁面、天面の間に指定されている放熱スペースが取れるかどうかを確認していただくといいと思います。壁等にピッタリとくっつけてしまうと、放熱スペース不足になり、製品寿命が短くなるリスクがあるからです」
せっかく買ったセラーがすぐに壊れてしまっては困りものだし、壊れたのが真夏であれば、中のワインにもダメージが及ぶ可能性がある。ではなぜ、放熱スペースがないと製品寿命が短くなってしまうのだろうか?
奥村:「ワインセラーは庫内温度が十分に冷えたら冷却を止め、温度が上がったらまた冷やし……ということを繰り返します。しかし、放熱スペースがとれないと、庫内温度がつねに高い状態になりやすく、冷却を止める時間が短くなってしまいます。すると、冷却装置の稼働時間が長くなり、その分寿命が短くなってしまうのです」
また、ワインセラーは庫内温度が安定したのち、冷却を止めることで庫内の「霜取り」を行うが、放熱スペースがないとそれも十分に行うことが難しくなる。
奥村:「放熱スペースがないと庫内温度が高いままですから、十分に霜取りを行うことができません。すると霜がどんどん大きくなって冷媒に貼り付き、いわば冷媒が毛布をかぶったような状態になってしまいます。それによって冷えない、冷えにくいということにもつながってしまうんです」
戸建てならば「階段幅」、店舗なら「カウンターサイズ」を確認
というわけで、ワインセラーを買おうと思ったらチェックすべき項目その1は「放熱スペース」。続いては、とくに戸建ての場合に問題になる「階段幅」だ。
奥村:「小型でしたらほぼ問題ないと思うのですが、大型のセラーの場合、階段幅が十分になかったりしますと、階段からセラーを上げることができず、ユニッククレーン車という吊り下げ用の機械を搭載した車を使って搬入する必要が生じます。搬入費用も高額となってしまうので、ここも事前にご確認いただきたいですね」
また、これは主に飲食店の場合だが「カウンター上げ」という、文字通りセラーを人力で持ち上げてカウンター越しに搬入する作業が必要になるケースがあり、スペース的にそれができないという可能性もあるという。いずれの場合も、念のため購入を予定している店舗に問い合わせるのが無難。階段の幅や天井の高さ、カウンターのサイズなど、事前に計っておくべき寸法を教えてくれるはずだ。
和室ならば凹み対策もしておこう
設置に関することでいうと、和室にセラーを置きたいという場合などは、セラーの重さでセラー本体が沈み、水平が取れなくなる可能性があるため、セラーと同じサイズの板材を置くなどの対策が必要となるケースは多い。
また、フローリングの床に置く場合、床の強度によっては凹み対策が必要となる。内部に重量のあるワインボトルを大量に収納するワインセラーはかなりの重量となるため、これも板材などの対策が必要となるケースも。販売店に問い合わせれば「このサイズのセラーに満杯にワインを入れたら、重さはこれくらいになりますよ」という目安を示してもらえるはずだ。
セラーの収納本数はボルドー基準。「なにを何本入れたいか」を把握しよう
さて、以上をチェックして設置に問題はないとなったら、今度は「なにを何本、いつまでに冷やす必要があるか」の計画を立てよう。たとえば、24本入りの中型セラーを購入したはいいものの、いざ入れようとしてみたら手持ちの24本のワインが“入らない”ということはセラーあるある。
奥村:「ワインセラーの収納可能本数は、ボルドータイプのボトルを基準にしているものが多いため、ブルゴーニュボトルやシャンパーニュボトルといった太いボトルを入れようと思うと、スペック通りに入らないケースが出てくるんです。たとえばお手元にシャンパーニュが24本あるから24本入りのセラーを買いましたとなると、何本かは入らない可能性がある。なにを何本入れるかという要望も私どもセラーに詳しい人間にご相談いただくと、ご要望に適したセラーをお伝えできるかと思います」
これはセラーを購入した人が一様に口を揃えることだが、「買おうと思っているサイズの一回りから二回り上のサイズ」が最適なセラーサイズだとはよく言われること。そう言われる背景には、ワインは知らない間に増えていくということもあるし、このようにボルドータイプ以外のボトルを収納する場合、思ったよりも“入らない”という事情も関係しているのだ。
届いたセラーはすぐに稼働できないことを知っておこう
さてここまでのチェックが済んだらほぼ準備は完了。最後にもうひとつチェックというより覚えておきたいのが届いたセラーはすぐには稼働できない」ということだ。
奥村:「ワインセラーにはペルチェ方式とコンプレッサー方式のふたつがあり、ペルチェ方式の場合は届いてすぐに設置し、コンセントをつないでいただいて問題がないのですが、中型・大型セラーに多いコンプレッサー方式の場合、機種によって異なりますが最低でも数時間、できれば半日は通電せずに静置していただきたいんです」
なぜかといえば、コンプレッサー方式のセラーの場合、庫内を冷やす冷媒と潤滑油が配送中の振動で混ざり合った状態となるため。それらが時間の経過によって分離する前に通電してしまうと、コンプレッサーの配管が詰まってしまい、故障の原因となってしまうのだ。つまり、「届いたらすぐにワインを冷やさないと困る」という状態でワインセラーの到着を待つのは良くない。
通電したワインセラーにはすぐにワインを入れない
さらに、通電できたらすぐにワインを入れるのも、実は良くないという。
奥村:「ワインを入れる前に、まず庫内温度が設定温度まで下がっていることを確認していただきたいんです。というのも、空気が冷える温度よりも液体が冷える温度のほうが遅いため、最初に庫内にワインを入れてしまうと冷却がスムーズにいかず、庫内温度が思ったように下がらないということになってしまうんです。ですので、まずは故障していないかの確認も含めて、通電後はワインを入れずに庫内を冷やし、その上でワインを入れていただくのがベターです」
ワインセラーを購入する前に調べるべきことまとめ
まとめると
【1】設置場所のサイズを調べる
【2】放熱スペースが取れるかどうかを確認する
【3】戸建ての場合、階段幅を確認する
【4】賃貸住宅や和室の場合、床の強度を確認し、適宜補強する
【5】「なにを何本入れるか」とそれが本当に入るのかを確認する
【6】セラーはすぐに稼働できない前提で準備しておく
【7】ワインは庫内温度が下がってから入れる前提で準備しておく
以上を調べたり、確認しておきたいということになる。
そして、これらのチェック項目で不安を感じたりわからないことがあったら、遠慮なく購入を予定している販売店に聞くのがベター。
購入後のアフターケアも含めて、信頼できる販売店で購入するのが、楽しく・安心なワインライフには重要なのだ。