冷蔵庫じゃダメ? ワインを「ワインセラー」で保存すべき理由
ワインにハマってしばらく経つと、ちょっといいワインを買ってきて自宅で寝かせたりしたくなるもの。そのような場合、ワインセラーで保管するのが半ば常識とされています。
しかし、ワインを冷蔵状態で保存するのであれば冷蔵庫でも問題ないのでは? とも思えます。本記事では、なぜワインはワインセラーで保存すべきなのか、なぜ冷蔵庫があまり好ましいとされないかを詳しく解説していきます。
ワインセラーの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!
ワインの「弱点」
なぜ冷蔵庫保存がワインにとって好ましくないのか。それを知るためには、ワインという繊細な飲み物の「弱点」を知る必要があります。
ワインには、次のような弱点があります。
これらすべて、ワインの品質を劣化させる可能性を秘めています。順番に見ていきましょう。
高温
まず極端な高温は熱劣化と呼ばれる劣化の原因となります。また、極端な低温もワインには良くなく、いずれの場合もワイン本来の豊かな風味を損ねる可能性があります。
温度変化も大敵で、これもワインの劣化につながります。また、極度の温度変化はワインの吹き漏れを引き起こすこともあります。
振動
振動によってワインは熟成が早く進む(ような作用を起こす)と言われています。また、振動によってワインの味わいがまとまりを欠くとも言われており、それがゆえにワインを購入したら一定期間休ませてから飲むという愛好家も多くいます。振動もまた、ワインにとっては好ましくない要素です。
光
多くの食料品と同様に、紫外線もワインの劣化の原因であり、それが故にワインのボトルは透明ではなく、色がつけられています。直射日光だけでなく、蛍光灯・白熱灯の光も避けたほうが無難です。ワインの専門店の店内が薄暗いことがあるのは、光による劣化を極力抑えるためです。
乾燥
コルクで打栓されたワインの場合、乾燥するとコルクが収縮し、そこから過剰に酸素が入り込み、ワインの酸化を思いがけずに進めてしまう可能性があります。液漏れや、そこからの劣化の可能性もあります。
冷蔵庫とワイン
このようにワインには様々な「弱点」があります。もちろん、1000円前後の早飲みタイプのデイリーワインであれば、長期保存をすることはないと思われるので、冷蔵庫保存でなんの問題もありません。とくに白やスパークリングワインであれば、冷蔵庫でキリッと冷やして飲むとおいしく楽しめるはずです。
しかし、一定期間寝かせることを前提に購入するちょっといいワインであれば話はちょっと変わってきます。
上で挙げたワインの弱点のうち、「温度変化」「振動」「乾燥」の影響を、冷蔵庫ではどうしても受けてしまうのです。
冷蔵庫は扉の開閉が頻繁に行われるため、その度に庫内の温度が上昇し、それを冷やすためにコンプレッサーが作動。庫内の温度を下げます。このように、1日の中で何度も温度変化が起きるのが冷蔵庫の宿命。これは、ワインの保存においていい環境とは言えません。
また、温度変化のたびに「ブーン」という音とともに作動するコンプレッサーの振動も、すでに述べたようにワインにとっては好ましくありません。実はワインセラーも多くはこのコンプレッサーの働きでワインを冷やしているのですが、ワイン専用の保管庫であるワインセラーの場合、一般的な冷蔵庫に比べて静粛性や振動に配慮した設計がされているため、ワインへの影響は最小限に抑えられるのです。
そして、ご存知の通り冷蔵庫の庫内は乾燥しています。一定の湿度を保つような設計になっているワインセラーとはその点でも異なっており、長期にわたって冷蔵庫にワインを入れれば、コルクの乾燥も避けられません。そして、長期にわたって保存したいようないいワインは、多くの場合乾燥に弱い天然コルクを採用しているものです。
もうひとつ、気をつけなくてはならないのが他の食品からの「匂い移り」です。冷蔵庫の庫内に香りの強い食品も収納されている場合、その香りがワインの繊細な香りに影響を与えるケースも考えられるのです。
では、冷蔵庫には絶対にワインを入れてはいけないのか? と言われると、矛盾するようですがまったくそんなことはありません。
すでに述べたようにコンビニやスーパーで買ってきてすぐに開け、数日で飲み切ってしまうのであれば冷蔵庫で冷やしてまったく問題なし。
そうでなくともスパークリングワインの場合はよく冷やさないと吹きこぼれる可能性があるので、飲む前には(ワインクーラーなど専用の道具がなければ)冷蔵庫でよく冷やす必要があったりもします。
保存に向かないといっても、たとえば1ヵ月程度であればそうそう顕著に劣化するということもないはずです。むしろ、夏場に常温保存するのであれば、冷蔵庫に入れておいたほうがずっとワインにとっては良いです。
あくまでも、ワインを「熟成させる」という目的で保存する場合に、冷蔵庫は向いていないということ。ですので、ワインセラーが壊れてしまった! というときには、乾燥を防ぐために新聞紙などで包み、多少温度の高い冷蔵庫の野菜室で保管するなどするケースもあります。
そこまで神経質になる必要はありませんが、やはり大切なワインを長期にわたり保存しようと思えばベストの選択肢はワインセラーとなるのもまた事実。
ワインは買ってすぐに楽しみたい! というのであれば冷蔵庫保存でOK。一方、熟成させてワインの時間による変化も楽しみたかったり、ワインを大量に保存しておきたいのならワインセラーが必須となります。
ワインをどう楽しみたいのか? そのスタイルに合わせて、冷蔵庫なのか、ワインセラーなのか、適切な保存方法を選んでみてはいかがでしょうか。