ワインの保管温度は何度がいい? 冷蔵庫保管はOK? ワインセラーの専門家に聞いてみた
奮発していいワインを買ったら、飲むタイミングまで味わいを保てるようにしっかり保管しておきたいもの。
そこで気になるのが、ワインの保管温度だ。ワインのおいしさをキープするには何度くらいが“適温”なのか。
株式会社イズミセでセラー販売を担当するエキスパート・奥村将宏に聞いた。
ワインの保管温度は「15度」が基本
熱に弱く、繊細なワインは、とくに高級ワインであるほど保管時の温度管理が重要になってくる。
では、具体的には何度くらいで保管するのがいいのだろうか? また、温度以外にも気をつけるべき点はあるのだろうか。
奥村(以下同):「ワインの保管温度としては、赤・白・スパークリングといった区分によらず、大体15度くらいが適温と言われてますし、私自身、お客様にご質問いただいた場合はそのように回答しています」
よく言われることだが、ワイン造りが盛んな欧州では、ワインを貯蔵する地下セラーの気温が大体15度程度とされ、その環境下でゆるやかに熟成が進んでいくことから、ワインの保管温度としては15度程度が適温とされる。
短期間の間品質を保つのはもちろん、長期にわたってワインをゆっくり熟成させて味わいの変化を楽しみたい場合なども、15度程度の環境下に置いておくのがベスト。そのためには、細かい温度設定のできるワインセラーに入れておくのがベストの選択肢となる。
ワインの保管温度が高いと劣化の可能性がある
では、セラーに入れずにおいた場合、ワインはどうなってしまうのだろうか?
奥村:「最近の日本は夏になると異常な高温に見舞われますが、たとえば室温が30度を超えてしまうような環境に置いた場合、ワインは熱に弱いので香りや味わいに劣化が起こる可能性があります。最悪の場合、異臭が発生して飲めなくなることもありますから、あまり高温下には放置していただかないほうが無難です」
ワインが熱によって劣化し、果実味が失われて酸味が強まったりすることを熱劣化というが、それ以外にもボトルに熱が加わることにより内部の液体・気体の体積が膨張し、それがコルクを押し上げて中の液体が漏れ出すといったことも起こり得る。
そのようなことになると、ボトル内部に空気が入り込み、過度な酸化を促すことにもつながってしまう。
そうなると、ワインの本来の味わいとはかけ離れた状態になってしまうのだ。
ワインの保管に冷蔵庫を使うのはアリ?
さて、自宅にセラーがない場合、熱からワインを守るための選択肢となるのが冷蔵庫。
だいたい2〜5度と言われる冷蔵庫での保管はワインにとっていいのか、悪いのか。
奥村:「涼しければ冷蔵庫でもいいのかというと、冷蔵庫のコンプレッサーの振動がワインに影響を与える可能性があったり、香りの強い食品と一緒に庫内に収納することで、その香りがワインに移ってしまう危険性があるんです。そういった意味で、冷蔵庫はあまり好ましいとは言えません」
また、ワインは熱のみならず温度変化にも弱い。冷蔵庫は1日の間に何度も何度も開け閉めするため、意外に庫内温度の上下動が激しい。
暑い室内に放置するよりははるかにマシではあるものの、ワインにとって理想的な保存環境かと言われれば疑問符がつくのだ。
よく、冷蔵庫のなかでは庫内温度が3〜7度程度とややセラーに近い野菜室に保存するのが良いと言われるが、野菜室も野菜を取り出すたびに開閉が行われるため、やはり温度変化や振動といった問題が付きまとう。
また、
奥村:「そもそも冷蔵庫はワインセラーに比べて乾燥しているため、コルクが乾燥によって細くなり、そこから空気が入り込んで酸化するといったリスクもあります」
ということも、冷蔵庫が長期保存に向かない理由のひとつだ。
もちろん冷蔵庫に入れたらすぐに劣化するといったことはまずあり得ないが、以上のような理由から、ある程度の長期間に渡ってワインを保管するという目的には適しているとは言えない。保存ではなく、たとえば白ワインやスパークリングワインを飲む際の冷却に使用するくらいが適切だろう。一方、手ごろな価格のテーブルワインを買ってきて、買ったその日から数日で飲み切ってしまうような場合であれば、冷蔵庫でも十分と言える。
ワインセラーで保管する際に気をつけたいこと
また、ワインセラーを使用する場合、設定温度は15度くらいにしておくのがベター。
ゆっくりと熟成が進む、ワインにとっての心地良い温度がそれくらいの温度となる。ただ、15度だと赤ワインを飲むには少し温度が低く、白ワインやスパークリングワインを飲むには少し温度が高い。
そのため、実際に飲む際は赤なら飲む少し前にセラーから出しておいたり、白であればワインクーラーや冷蔵庫で軽く冷やす(スパークリングワインならお好みでしっかり冷やす)のがベター。
ただ、その際に冷凍庫で冷やすのはNG。冷凍庫に入れたのをうっかり忘れてしまう、というケースが意外と多く、一度凍ったワインは味わいが変化し、溶けたところで元通りには戻らない。冷凍庫にはくれぐれもワインを入れないように、気をつけよう。