日本酒はどうやって保存する?冷蔵庫でOK?熟成は?専門家に聞いた!

日本酒をどう保存するか
日本酒が好きになると、興味のある銘柄が次から次へと現れて、知らないうちについ所有本数が多くなっていったりしますよね。そうなると、問題になるのが「どう保管するか」という問題。保存は冷蔵庫で良いのか?常温ではマズいのか?ということではないでしょうか。そこで、株式会社イズミセでセラー販売を担当するエキスパートで、唎酒師の資格を持つ奥村将宏に、日本酒の保存方法について聞きました!
良い日本酒はなるべく最高の状態で飲みたいもの。そのためには、開栓する日までなるべく適した状態で保存することが重要になります。そして、日本酒を保存しようと思ったときに、まず選択肢に上がるのは常温で置いておくか、冷蔵庫で冷蔵保存するかではないでしょうか。
奥村「まず、純米酒、本醸造酒、普通酒といったお酒は15℃前後の室温であれば常温保存でもOKです。その際、なるべく涼しくて暗い場所での保管がおすすめです。一方、吟醸、大吟醸といった吟醸系のお酒は常温ではなく、冷蔵庫など5℃以下の温度で保存していただきたいですね」
火入れをしている純米酒、本醸造酒、普通酒といったカテゴリの日本酒は、常温保存でも問題はなし。とはいえ、昨今の夏場の猛暑の中に放置するのは良くないので、夏場だけは冷蔵庫に閉まっておくのがベターです。
冷蔵庫で保存する場合の注意点
一方、吟醸系の日本酒は冷蔵庫環境での保存が望ましいとされています。そして、冷蔵庫で保存する場合には気をつけてほしいことがあると奥村は言います。
奥村「ワインのコルク栓と比べると、日本酒の栓は密閉度が高くありません。そこで気になるのは匂い移りです。抜栓後の日本酒は、キムチなどの匂いの強い食品の近くで保存していると匂いが移ることがあるので、そこは注意してもらいたいです。また、冷蔵庫では瓶を横にして保存することも多いと思いますが、そうなると液面が空気に触れる面積が増えるため、日本酒の劣化につながる酸化が進みやすくなる点にも注意が必要です」
日本酒を冷蔵庫の野菜室で保存する方も多いと思われますが、それはケースバイケースで、野菜室のほうに匂いの強いものがあるようであれば、通常の冷蔵室、逆もまた真なり、といった運用で良さそうです。また、ワインを冷蔵庫で保存する場合に良く指摘される、「冷蔵庫の振動の影響」「扉の開閉による温度変化」といった要素は、日本酒の場合気にしなくても問題ありません。
というわけで、日本酒の保存方法は
以上が基本となります。
生酒を「氷温貯蔵」させる場合
そして、ここからは応用編。ここまで紹介したのは、基本的に買ったらすぐに飲むことを想定した場合の保存方法でしたが、最近流行の兆しを見せている「氷温熟成」を行う場合は話が変わってきます。
奥村「たとえば生酒は、零下で保存するとフレッシュさはそのままに酒質がまろやかになり、非常においしくなります。そのような熟成を目指す場合、冷蔵庫での保存は温度が“高すぎる”ということになるんです」
火入れをしない生酒の零下(氷温)保存は最近注目されている日本酒の楽しみ方のひとつで、零下0-5度といった温度で長期間保存することで、アルコール分子と水分子が結合し「クラスター」と呼ばれるものを形成する“クラスター効果”が起こるとされ、これによりフレッシュさはそのままに、口あたり・テクスチャーが滑らかに変化していきます。
奥村「フレッシュな生酒の大きな魅力である豊かな香り、透明な色、そしてもちろん味わいはほとんど変化させないまま、出来たての荒々しさやアルコール感だけを抑えて、角の取れたまろやかな印象に変化していくのです。氷温貯蔵は、日本酒のいいところだけ残す“いいとこどり”の方法なんです」
もちろん、冷蔵庫でも長期保存は不可能ではありませんが、3~8度といった標準的な冷蔵庫の庫内温度は生酒の熟成には温度が“高すぎる”環境となってしまい、クラスター効果は進む一方、色が黄色味がかってきたり、香りにおいても酸化したお醤油や漬け物のような“ヒネた”香りが出てしまうなど、日本酒にとって望ましくない変化が起きる可能性が生じてしまいます。
そのため、日本酒の蔵元の一部では、蔵内部に常に氷点下の状態をキープできる熟成庫を作り、そこで生酒を長期にわたり熟成させ、ときには氷温状態のまま宅急便で送るなど、“氷温熟成”にとことんまでこだわった造りをするところもあるのです。
氷温熟成日本酒を自宅で楽しみたい場合
では、このような氷温熟成日本酒を自宅で楽しむにはどうしたらいいのでしょうか?
奥村「冷蔵庫の庫内だと温度が高すぎますし、冷凍庫だと今度は温度が低すぎて凍結のリスクがあります。私はワインセラーが専門ですが、ワインセラーも温度設定の下限が4-5度と、氷温貯蔵には高すぎて、ワインの保存には低すぎる状態が限界。そのため、最近では氷点下で保存できる“日本酒セラー”が相次いで発売されているんです」
日本酒セラーとは、文字通り日本酒の保存に特化したセラー(保管用冷蔵庫)のこと。基本的にはワインセラーと似た構造ですが、大きく違うのが設定温度の下限。
奥村「以前は、日本酒セラーというと0度までしか設定できないものも多かったのですが、昨今氷温貯蔵に注目が集まっていることもあり、零下の設定ができる日本酒セラーが増えているんです。弊社の日本酒セラー『ルフィエール SAKE23+』も、マイナス5度まで設定できるんですよ」
零下で保存することで、酵母の活動は緩やかになります。それにより、色・味・香りは変化をほとんどしなくなるのですが、先にあげたアルコール分子と水分子のクラスター効果だけが進み、角が取れたまろやかさだけが増していく状態に。
マイナス5度までバッファがあるのは、扉の開閉や外気温の影響などにより、0度を超えた温度にならないようにするためで、そのためにはマイナス5度くらいまで設定できれば十分だから。
奥村「繰り返しになりますが、日本酒はすぐ飲む分には常温、あるいは種類によって冷蔵庫保存してもらえれば問題ありません。ですが、良い生酒を買ってきて、氷温で保存するという楽しみ方をしたいのであれば、日本酒セラーでの保存をオススメします」
ご自身の買いたい日本酒や、飲み方に合わせて正しい保存法を選んで、ぜひおいしく楽しい日本酒ライフを!